自社株とは、同族会社のオーナー社長やその一族が所有する株式のことをいいます。取引相場のある上場株式は、取引所の株価という客観的な数字で株価を評価することができますが、中小企業のような
上場していない会社の株価を評価する場合、客観的な数値がありません。この自社株をどのように評価するかというと、国税庁が作成している「財産評価基本通達」の「取引相場のない株式等の評価」に基づいて評価することになります。
非上場株式とは、上場株式以外の株式の総称であり、非上場株式の中でも上場株式に近い規模の大会社から、個人企業並みの小規模会社までその内訳は千差万別であります。よって、非上場株式の評価方法を定める財産評価基本通達では、取引相場のない非上場株式を規模に応じて大会社・中会社・小会社に区分し、区分に応じてそれぞれに即した評価方式を定めています。
非上場株式を贈与や相続で取得した株主が同族株主かそれ以外の株主かによって評価方法が変わってきます。同族株主か否かで会社経営への影響度(支配力)が変わるため、支配力によってその株式を保有している目的も変わってくると考えられるからです。
支配権を有する同族株主が取得する株式の評価は、会社の業績や資産内容等を反映した原則的評価方式(類似業種比準方式、純資産価額方式及びこれらの併用方式)により評価し、同族株主以外の少数株主が取得する株主は特例的評価方式(配当還元方式)により評価することになります。一般的に
特例的評価方式(配当還元方式)による評価の方が株価は低くなる傾向にあります。
また、評価対象会社が保有している資産の大半が株式・土地等の資産内容が特異な会社、開業間もない会社・休眠会社等の営業状態が特異な会社(特定会社)は、通常の事業活動を前提としている原則的な評価方法は馴染まないため、個別にその評価方法が定められています。
なお、非上場株式を売買する際の売買価格の考え方については、「非上場株式の売買価格ページ」を参照してください。
株主の所有する評価会社の議決権割合に応じて次のような評価方法になります。
(1)同族株主のいる会社の評価方式
株主の態様 |
評価方式 |
同族株主 |
取得後の議決権割合が5%以上の株主 |
原則的評価方式 (類似業種比準方式又は純資産価額方式、若しくはそれらの併用方式) |
取得後の議決権割合が5%未満の株主 |
中心的な同族株主がいない場合 |
中心的な同族株主がいる場合 |
中心的な同族株主 |
役員文は役員予定者 |
その他の株主 |
特例的評価方式 (配当還元方式) |
同族株主以外の株主 |
①同族株主とは
課税時期における評価会社の株主の内、株主の一人及びその同族関係者の有する議決権割合の合計数が、その会社の議決権総数の30%以上である場合におけるその株主及びその同族関係者をいいます。
なお、この場合において、その評価会社の株主の内、株主の一人及びその同族関係者の有する議決権割合の合計数のうち最も多いグループの有する議決権割合の合計数が、その会社の議決権総数の50%超である会社においては、50%超のその株主及び同族関係者をいいます。
②同族関係者とは
親族(配偶者、6親等内の血族、3親等内の姻族)、特殊関係のある個人(内縁関係にある者等)及び特殊関係にある会社(子会社、孫会社等)をいいます。
③中心的な同族株主とは
課税時期において、同族株主の一人並びにその株主の配偶者・直系血族・兄弟姉妹及び一親等の姻族(これらの者の同族関係者である会社のうち、これらの者が有する議決権割合が25%以上である会社を含む)の有する株式の合計数が、その会社の議決権数の25%以上である場合におけるその株主をいいます。
(2)同族株主がいない会社の評価方法
株主の態様 |
評価方式 |
議決権割合の合計が15%以上の株主グループに属する株主 |
取得後の議決権割合が5%以上の株主 |
原則的評価方式 (類似業種比準方式又は純資産価額方式、若しくはそれらの併用方式) |
取得後の議決権割合が5%未満の株主 |
中心的な株主がいない場合 |
中心的な株主がいる場合 |
役員又は役員予定者 |
その他の株主 |
特例的評価方式 (配当還元方式) |
議決権割合の合計が15%未満の株主グループに属する株主 |
①中心的な株主とは
中心的な株主とは、同族株主のいない会社の株主で、課税時期において株主の一人及びその同族関係者の有する議決権の合計数がその会社の議決権総数の15%以上である株主グループのうち、いずれかのグループに単独でその会社の議決権総数の10%以上の議決権を有している株主がいる場合におけるその株主をいいます。
(3)会社規模の区分に応じた評価方式の概要
会社区分や評価方式の詳細な説明は後述しますが、会社規模の区分に応じて評価方式は下記の通りとなります。
会社の規模 |
評価方式 |
備考 |
大会社 |
類似業種比準価額 |
純資産価額でもよい |
中会社の大 |
類似業種比準価額x90%+純資産価額x10% |
中会社の中 |
類似業種比準価額X75%+純資産価額x25% |
中会社の小 |
類似業種比準価額x60%+純資産価額X40% |
小会社 |
純資産価額 |
〈類似業種比準価額X50%+純資産価額X50%〉でもよい |
★類似業種比準方式と純資産価額方式の比較
類似業種比準方式 |
純資産価額方式 |
利益の大きい会社の評価額が高くなる傾向 |
社歴が長く剰余金の大きい会社の評価が高くなる |
上場会社の株価が高いと評価も上がる (外部要因の影響を受ける) |
含み益のある不動産は株式等の資産を所有していると評価が高くなる |
評価額の変動が大きいので対策がしやすい |
評価額の変動が小さいので対策が難しい |
非上場株式の評価方法には原則的評価方式である類似業種比準方式と純資産価額方式があり、大会社には類似業種比準方式、小会社には純資産価額方式が適用されます。また、中会社はさらに大・中・小に区分され、類似業種比準方式と純資産価額方式を一定比率で組み合わせて評価額を算定します。なお、大会社、中会社でも、純資産価額方式の評価額のほうが低い場合には、純資産価額を評価額とすることができます。
一方、同族株主等以外の株主等については、配当額に基づいて評価することができる配当還元方式を採用することができます。
(1)原則的評価方式
①類似業種比準方式
類似業種比準価額は、事業内容の類似する上場企業の株式の株価に比準して株価を評価する方法のこといいます。具体的には評価会社の事業に該当する業種(類似業種)の上場会社の株価「A」、1株当たりの配当金額「B」、利益金額「C」及び純資産価額「D」(帳簿価額によって計算した金額)を基とし、次の算式によって計算します。
上記の算式中の「A」、「
B」、「
C」、「
D」、「B」、「C」および「D」は、それぞれ次によります。なお発行済株式数は、1株当たりの資本金等の額を50円とした場合の発行済株式数をいいます。
「A」= |
類似業種を「類似業種比準価額計算上の業種目及び業種目別株価等」から評価会社の業種目を判定する。2以上の業種を兼業している場合は、原則として取引金額の割合が50%を超える業種を評価会社の業種とするが、50%を超える主たる業種目がない場合は財評通181-2により判定。
類似業種の株価は課税時期の属する月以前3カ月間の各月平均株価、前年平均株価、前2年間の平均株価のうち、最も低い株価を採用。 |
「B」= |
評価会社の1株当たりの配当金額 |
直前期末以前2年間におけるその会社の 剰余金の配当金額の合計額(特別配当等は除く) |
× |
1 |
÷ |
発行済株式数 (自己株式控除後) |
- |
2 |
「C」= |
評価会社の1株当たりの利益金額
㋑直前期のみで計算した1株当たり利益金額
㋺直前期と直前々期の平均で計算した1株当たりの利益金額
※㋑と㋺のいずれか低い方を選択できる。
ただし比準要素数1の会社・比準要素数0の会社の判定要素の金額は、
大きい方(プラスの金額)が有利 |
直前期末以前1年間における法人税の課税所得金額(非経常的な利益金額を除く) + その所得の計算上益金に算入されなかった 利益の配当等の金額等 + 損金算入した繰越欠損金の控除額 |
|
÷ |
|
発行済株式数 (自己株式控除後) |
|
|
「D」= |
評価会社の1株当たりの純資産価額(帳簿価額によって計算した金額) |
(直前期末における資本金等 + 法人税法上の利益積立金額) |
÷ |
発行済株式数 (自己株式控除後) |
|
|
|
「B」= |
課税時期の属する年の類似業種の1株当たりの配当金額
|
|
「C」= |
課税時期の属する年の類似業種の1株当たりの年利益金額 |
「D」= |
課税時期の属する年の類似業種の1株当たりの純資産価額(帳簿価額によって計算した金額) |
②純資産価額方式
純資産価額方式は、株式を会社財産に対する持分と考え、会社の純資産額に基づいて株式の評価額を算定する方法です。
具体的には、課税時期において会社の所有する資産及び負債を「相続税評価額」によって評価し、資産の合計額から負債の合計額を差し引いて相続税評価額ベースの純資産額(A)を求めます。次に帳簿価額(税務上)による資産の合計額から負債の合計額を差し引いて帳簿上の純資産額(B)を算定します。(A)-(B)が含み益(C)ということになるので、含み益(C)の37%を法人税相当額として(A)から控除した金額を純資産額とし、発行済株式数で除した金額を評価額とする方法です。
※通達は課税時期における仮決算を予定していますが、実務上は直前期末基準を採用しています。
この計算で用いる帳簿価額は会計上の帳簿価額ではなく、税務上の帳簿価額を使用します。
- 例)
- ・土地建物等を課税時期開始前3年以内に取得等した場合の価額は、相続税評価額ではなく、課税時期における通常の取引価額相当額により評価する。
- ・繰延資産等、換金価値のない資産は評価対象としない。
- ・営業権を評価する必要がある。
- ・直前期末日後から課税時期までに確定した剰余金の配当等の金額は負債に計上する。
- ・評価会社が受取る生命保険金等は資産に計上する必要がある。同時に保険金に対する法人税等相当額について負債に計上する。
- ・固定資産税等のうち、課税時期において未払がある場合には負債に計上する。
- ・被相続人の死亡により支給が確定した退職手当金・功労金等は負債に計上する。
なお、株式の取得者とその同族関係者の議決権割合が50%以下であれば、会社区分に応じて「1株当たりの純資産価額」に80%を乗じて評価します。
★評価減ができる場合とできない場合のまとめ
会社の規模 |
原則 |
納税者の選択 |
大会社 |
類似業種 |
純資産価額【評価減不可】 |
中会社 |
類似業種×L+純資産価額【評価減可】×(1-L) |
純資産価額【評価減不可】×L+純資産価額【評価減可】×(1-L) |
小会社 |
純資産価額【評価減可】 |
類似業種×0.5+純資産価額【評価減可】×0.5 |
③併用方式
上記①類似業種比準方式と②純資産価額方式を会社規模に応じた割合により併用して評価額を計算する方式です。
(2)例外的評価方式(配当還元方式)
同族株主等以外の株主等は会社に対する支配力がないため、その所有目的は、株主は配当を期待して所有しているとの考え方及び評価の簡便性の観点から配当額に基づいて評価する配当還元方式を採用されます。
①配当還元方式が適用できる株式
- ア)同族株主のいる会社の同族株主以外の株主が取得した株式
- イ)同族株主のいる会社の同族株主グループに含まれるが、会社支配力の少ない一定の少数株主(一定の役員を除く)として取得した株式
- ウ)同族株主のいない会社の株主の内、議決権割合が15%以上の株主グループがいる場合
で、その株主らが15%以上の株主グループに含まれない株主として取得した株式
- エ)同族株主のいない会社において、議決権割合が15%以上の株主グループがいて、さらにその15%グループの中に中心的な株主がおり、判定する本人が中心的な株主でなく、一定の役員でない場合の株主として取得した株式
②計算方法
※2 直前期末以前2年間の配当金合計÷2が2円50銭未満の場合(無配を含む)は、2円50銭として計算します。また、配当金額には特別配当等の毎期継続されないものは除きます。
③評価方法の選択
配当還元方式が原則的評価方式よりも評価額が高い場合は、原則的評価方式による評価を採用することができます。
「3.非上場株式の評価方法」に記載の通り、
評価方法は3種類ありますが、どの評価方法が採用されるかは、会社規模の区分によって判定します。
会社規模の区分の判定を行うのは、上場会社に近い規模の会社については、上場会社の株価を基にした類似業種比准方式により評価し、規模の小さい会社については事業用資産の評価に基づく純資産価額方式による評価が実態に即していると考えられるためです。
「会社規模」は、下の表のように従業員数、総資産価額、取引金額、業種に応じて、大会社、中会社、小会社に区分します。
このうち中会社はさらに、大、中、小に分かれるため、会社規模は5つに区分されます。
この5つの区分によって、評価方式が決まります(以下の図参照)。
なお、従業員数が70人以上であれば、無条件で「大会社」です。
【判定の仕方】
・従業員数が70人以上の会社→大会社に該当
・従業員数が70人未満の会社
※年間業員数の計算は継続勤務従業員数(1年間を通じて勤務+週30時間以上勤務)に継続勤務従業員以外の従業員の1年間の労働時間の合計時間を直前期末以前1年間の平均労働時間(1,800時間)で除した数を加算して求めます。一定の役員(社長や専務、常務などの内部的職制を有する取締役)は従業員数に含みません。
※総資産価額(帳簿価額)は確定決算上の帳簿価額のことをいいます。貸倒引当金は控除しません。一株当たり純資産価額を求める場合に使用する税法上の帳簿価額とは異なります。
(1)大会社の評価方法
類似業種比準方式によって行います。ただし、純資産価額方式を選択することもできます。
(2)中会社の評価方法
この株式の評価は
類似業種比準方式と
純資産価額方式との併用によって評価します。
その計算式は次のとおりです。
上記の算式中の「L」は、評価会社の総資産価額(帳簿価額によって計算した金額)および従業員数または直前期末以前1年間における取引金額に応じて、それぞれに次に定める割合のうちいずれか大きい方の割合とします。
①総資産価額(帳簿価額によって計算した金額)及び従業員数に応ずる割合
卸売業 |
小売・サービス業 |
卸売業、小売・サービス業以外 |
割合 |
4億円以上(従業員数が35人以下の会社を除きます。) |
5億円以上(従業員数が35人以下の会社を除きます。) |
5億円以上(従業員数が35人以下の会社を除きます。) |
0.90 |
2億円以上(従業員数が20人以下の会社を除きます。) |
2億5,000万円以上(従業員数が20人以下の会社を除きます。) |
2億5,000万円以上(従業員数が20人以下の会社を除きます。) |
0.75 |
7,000万円以上(従業員数が5人以下の会社を除きます。) |
4,000万円以上(従業員数が5人以下の会社を除きます。) |
5,000万円以上(従業員数が5人以下の会社を除きます。) |
0.60 |
複数の区分に該当する場合には、上位の区分に該当するものとします。
②直前期末以前1年間における取引金額に応ずる割合
卸売業 |
小売・サービス業 |
卸売業、小売・サービス業以外 |
割合 |
7億円以上30億円未満 |
5億円以上20億円未満 |
4億円以上15億円未満 |
0.90 |
3億5,000万円以上7億円未満 |
2億5,000万円以上5億円未満 |
2億円以上4億円未満 |
0.75 |
2億円以上3億5,000万円未満 |
6,000万円以上2億5,000万円 |
8,000万円以上2億円未満 |
0.60 |
(3)小会社の株式の評価方法
純資産価価額方式によって評価します。ただし、納税義務者の選択により、中会社における併用方式のLを0.50として評価することができます。
(4)特定評価会社株式の評価
上記の他に、資産の保有状況、営業の状態等が一般の会社と異なる会社があります。そのような会社の株式(いわゆる特定会社株式)については、一般の会社の評価方法では適正な評価を行うことが馴染まないため、一般の評価会社の株式とは区分して個別に評価方法が定められています。
特定会社株式に該当すると比準要素数1の会社以外は、類似業種比準方式の評価方法を採用できないため、原則として純資産価額方式による評価となり、含み資産の多い会社の株式は高く評価される傾向にあります。
①土地保有特定会社
会社規模区分に応じて、課税時期において、総資産価額に占める土地などの価額合計の割合(土地保有割合)が一定の割合以上の会社のことです。この割合は会社の規模によって異なりますが、土地保有特定会社に該当する場合には、純資産方式により評価を行うことになります。
※判定の基礎となる土地等には、所有目的や所有期間のいかんにかかわらず、評価会社が所有する全ての土地等が含まれます。
地上権、借地権、販売用の土地等も含まれることになります。
【土地保有特定会社の評価方法】
区分 |
評価方法 |
同族株主が取得した株式 |
純資産価額方式
ただし、株式の取得者とその同族関係者の有する持株割合が50%以下であるときは、純資産価額の80%が評価額となります。 |
同族株主以外が取得した株式 |
配当還元方式
ただし、配当還元価額が、上記原則又は特則により評価した価額より高い場合は、上記原則又は特則により評価した価額になります。 |
【資産の組み替えについて】
土地保有特定会社の判定を回避するためには、土地を売却して他の資産に組み替える方法や、会社の組織再編を行い土地の保有割合を引き下げ、土地保有特例会社の判定から外すための対策が行われることがあります。
しかし、課税時期前に合理的な理由がなく、土地の保有割合の引き下げをのみを目的として資産変動が行われた場合には、その資産変動はなかったものとして、土地保有割合の判定が行われることになります。具体的には直前に多額の借入を行う資産の組み替え等が考えられます。
②株式保有特定会社
課税時期における評価会社の総資産に占める株式・出資の価額の合計の割合が50%以上である会社を「株式保有特定会社」といいます。
株式保有特定会社の判定となる株式等は、上場・非上場、所有期間、所有目的を問いません。また出資金、新株予約権付社債も含まれます。
該当するもの |
証券会社が保有する商品としての株式 外国株式 株式制のゴルフ会員権 新株予約権付社債 |
該当しないもの |
匿名組合の出資 証券投資信託の受益証券 |
【株式保有特定会社の評価方法】
原則として純資産価額方式により評価することとされています。
ただし、純資産価額方式に代えて、「S1+S2」方式とよばれる類似業種比準方式を修正した評価方式により評価をすることもできます。
「S1+S2」のうち「S2」は、会社が保有する株式等に相当する部分の価額をいい、純資産価額方式により評価されます。「S1」は、会社が保有する株式等やその株式等に係る配当金を除外した上で会社規模に応じた原則的評価方式である類似業種比準方式、純資産価額方式またはその併用方式により評価した金額となります。このS1の金額とS2の金額の合計額が、「S1+S2」方式による評価額となります。
株式保有特定会社に該当すると、株式評価において純資産価額の占めるウエイトが高くなるため、含み益のある株式を多数保有している場合は株価が高額になるおそれがあります。
区分 |
評価方法 |
同族株主が取得した株式 |
原則 |
純資産価額方式
ただし、株式の取得者とその同族関係者の有する持株割合が50%以下であるときは、純資産価額の80%が評価額となります。 |
特例 |
S1+S2方式 |
同族株主以外が取得した株式 |
配当還元方式
ただし、配当還元価額が、上記原則又は特則により評価した価額より高い場合は、上記原則又は特則により評価した価額になります。 |
【資産の組み替えについて】
株式保有特定会社の判定を回避するためには、株式等を売却して他の資産に組み替える方法や、会社の組織再編を行い株式の保有割合を引き下げ、株式保有特例会社に該当しないようにすることを考えられます。
しかし、課税時期前に合理的な理由がなく、土地の保有割合の引き下げをのみを目的として資産変動が行われた場合には、その資産変動はなかったものとして、株式等保有割合の判定が行われることになります。具体的には直前に多額の借入を行う資産の組み替え等が考えられます。
③比準要素数1の会社
比準要素数1の会社の株式とは、類似業種比準方式で定められた次の3つの金額のうち、直前期末においていずれか2つの金額が0の会社で、なおかつ、直前々期末を基準にして計算した場合にいずれか2つ以上の金額が0である評価会社のことをいいます。
- ・1株当たりの配当金額
- ・1株当たりの利益金額
- ・1株当たりの純資産価額(税務上の帳簿価額によって計算した金額)
【具体例】
比準要素 |
直近 |
2期前 |
3期前 |
配当 |
0 |
0 |
0 |
利益 |
△200 |
△500 |
600 |
純資産 |
100 |
300 |
900 |
★計算方法
配当・・・2年間の平均額
利益・・・1年間の金額 or 2年間の平均額
純資産・・・直前期末の金額
★直近基準の判定
配当⇒ゼロ
利益⇒ゼロ(直近、2期前ともにマイナスのため)
純資産⇒100
∴ 配当と利益がゼロのため2つ以上の金額がゼロに該当
★2期前基準の判定
配当⇒ゼロ
利益⇒50(△500と600の平均)
純資産⇒300
∴ 配当はゼロだが、利益と純資産がプラス
結論⇒直前前期はいずれか2つ以上の金額が0ではないため比準要素1の会社に該当しない
比準要素数1の会社は、類似業種比準価額で評価する際に、適正な評価をすることが出来ないため、特別な評価方式により評価します。
しかし、株式保有特定会社、土地保有特定会社、開業後3年未満の会社や開業前または休業・清算中の会社に該当する場合は比準要素数1の会社には含まれません。
比準要素数0の会社は、別途規定が設けられています。
【比準要素数1の会社の評価方法】
区分 |
評価方法 |
同族株主が取得した株式 |
原則 |
純資産価額方式
ただし、株式の取得者とその同族関係者の有する持株割合が50%以下であるときは、純資産価額の80%が評価額となります。 |
特例 |
納税者の選択により、次の算式で求めた価額を評価額とすることができます。
類似業種比準価額×0.25+1株当りの純資産価額×0.75 |
同族株主以外が取得した株式 |
配当還元方式
ただし、配当還元価額が、上記原則又は特則により評価した価額より高い場合は、上記原則又は特則により評価した価額になります。 |
④開業後3年未満の会社等
開業後3年未満の会社といわゆる比準要素数Oの会社(下記②) の2つをいいます。
- ア) 開業後3年未満の会社とは、開業してから課税時期まで3年未満会社のことをいいます。
法人設立日ではなく開業日から3年なので注意が必要です。
これは節税のための法人設立及び休眠会社を利用した節税を防止するために規制されています。
- イ) 比準要素数0の会社
- 直前期末基準のみで判定したBCDの3つの全てが0の場合。直前期末基準とは次のBCDをいいます。
- B:配当金は直前期と直前々期の平均額
- C:利益金は直前期のみ又は直前期と直前々期の平均の有利な方の額
- D:純資産価額は直前期のみの金額
※つまり直前々々期のデータは使わないで判定することになります。
【開業後3年未満の会社等の評価方法】
区分 |
評価方法 |
同族株主が取得した株式 |
純資産価額方式
ただし、株式の取得者とその同族関係者の有する持株割合が50%以下であるときは、純資産価額の80%が評価額となります。 |
同族株主以外が取得した株式 |
配当還元方式
ただし、配当還元価額が、上記原則又は特則により評価した価額より高い場合は、上記原則又は特則により評価した価額になります。 |
⑤開業前または休業中の会社
開業前とは会社設立後未開業の状態の会社をいい、休業中とは課税時期の前後において休業中の会社のことをいいます。なお、その後近々再開する予定等の短期間の休業は除かれます。
【開業前または休業中の会社の評価方法】
区分 |
評価方法 |
同族株主が取得した株式 |
純資産価額方式のみ。
株式保有割合が50%以下でも80%評価の適用はない |
同族株主以外が取得した株式 |
⑥清算中の会社
清算中の会社とは、解散決議をして法務局に解散登記をした後、清算結了前の会社をいいます。
【清算中の会社の評価方法】
区分 |
評価方法 |
同族株主が取得した株式 |
原則として、清算分配見込み額によるが、実務上は純資産価額による評価も可能 |
同族株主以外が取得した株式 |
⑦特定の評価会社の株式の評価方法のまとめ
会社の区分 |
評価方式 |
比準要素数1の会社 |
純資産価額/併用方式 (類似業種比準価額x25%+純資産価額X75%) |
株式保有特定会社 |
純資産価額/S1+S2方式 |
土地保有特定会社 |
純資産価額 |
開業後3年未満の会社・比準要素数Oの会社 |
純資産価額 |
開業前または休業中の会社 |
純資産価額 |
清算中の会社 |
清算分配金見込み額 |
当事務所では、非上場株式の売買価格決定の参考資料として税務上の株価算定サービスを提供しております。
株価算定サービスは証券会社や銀行等の金融機関やコンサルティング会社も行っていますが、金融機関は税理士(法人)ではないので税務相談を受けることはできず、最終的な税務申告まではサポートできません。
また、金融機関の提案は、金融機関にメリットが出るように融資が紐づいている場合等が多いため、必ずしも経営者にとってベストな方法とは考えられないケースも見受けられます。
中小企業の経営者にとっては、非上場株式の譲渡価格は税務面の影響が大きいため、顧問の税理士等にしっかり相談されることをお勧めします。
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