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    コラム

    相続専門オフィスより、新着情報や相続税を中心とした様々な税に関するお知らせを記載しております。
    ぜひ一度ご一読ください。

    贈与に関するコラム

    節税効果の高い生前贈与の金額の算定の仕方

    相続税対策の定番といえば、被相続人が生前に配偶者、子、孫に財産を贈与しておく暦年生前贈与です。
    この贈与税には110万円の基礎控除があるため、110万円以内の贈与であれば贈与税はかかりません。
    また、相続税の見込み額が高い場合、贈与税を払ってでも贈与した方が相続税とのトータルの税金が安くなるのであれば、積極的に生前贈与をしていくことが節税に繋がります。
    この生前贈与の金額をいくらにするかということが、相続税対策で最も重要なテーマといえるでしょう。

    いくら生前贈与するのが最も節税となるか

    贈与の金額が少なければ将来の相続税が多額になりますし、贈与の金額が多ければ逆に贈与税の負担が大きくなります。贈与税と相続税の合計値が最小になるような組み合わせを考えることが、最良の節税に繋がりますが、贈与税・相続税それぞれに別々の累進課税税率が設定されており、単純な方程式等を用いて算定することはできないどころか、計算には非常に複雑な場合分けが必要となります。そこで、当事務所のホームページでは、①現在の遺産総額②相続が発生するまでの見込み年数③贈与する相手の3要件を入れれば、最適な贈与額の参考値をシミュレーションできるツールを準備いたしました!


    まずは、是非入力してみてください!現時点でいくら節税できるのかが一瞬にして算出されます。また、当事務所では生前対策業務の一環として、様々な条件での生前贈与のシミュレーションのレポートを作成しておりますので、お気軽にお問合せください。

    参考・・最適な生前贈与の金額の計算方法】

    贈与税と相続税は累進課税であるため、金額が大きくなればなるほど税率が高くなる仕組みになっています。このため、税金の計算を簡単にするために、一般的には速算表が用いられています。

    贈与税の速算表 特定贈与財産の贈与
    基礎控除額(110万円)控除後の課税価格 税率 控除額
    ~200万円以下 10%
    200万円超~400万円以下 15% 10万円
    400万円超~600万円以下 20% 30万円
    600万円超~1,000万円以下 30% 90万円
    1,000万円超~1,500万円以下 40% 190万円
    1,500万円超~3,000万円以下 45% 265万円
    3,000万円超~4,500万円以下 50% 415万円
    4,500万円超~ 55% 640万円

    贈与税の速算表 一般贈与財産の贈与
    基礎控除額(110万円)控除後の課税価格 税率 控除額
    ~200万円以下 10%
    200万円超~300万円以下 15% 10万円
    300万円超~400万円以下 20% 25万円
    400万円超~600万円以下 30% 65万円
    600万円超~1,000万円以下 40% 125万円
    1,000万円超~1,500万円以下 45% 175万円
    1,500万円超~3,000万円以下 50% 250万円
    3,000万円超~ 55% 400万円

    相続税の速算表
    法定相続分の取得財産※ 税率 控除額
    ~1,000万円以下 10%
    1,000万円超~3,000万円以下 15% 50万円
    3,000万円超~5,000万円以下 20% 200万円
    5,000万円超~1億円以下 30% 700万円
    1億円超~2億円以下 40% 1,700万円
    2億円超~3億円以下 45% 2,700万円
    3億円超~6億円以下 50% 4,200万円
    6億円超 55% 7,200万円
    ※遺産に係る基礎控除額(3,600万円+600万×法定相続人の数)控除後

    例えば、相続財産が3億円、子供が1人の場合、相続税は3億円から基礎控除3,600万円を引いた2億6,400万円が課税対象になります。上の相続税の速算表に当てはめると、45%の税率になるので、2億6400万円×45%−2,700万円=9,180万円が相続税になります。
    この表の45%のことを限界税率といいます。本来の計算方法では1,000万円以下は10%、1,000万円〜3,000万円の間は15%というように金額に応じた税率で計算した結果を積上げて税金を計算することになりますが、この方法だと計算が煩雑になるため、速算表に基づき一旦遺産に応じた最高税率をかけて、その後低税率部分を控除する方法が採られています。
    よって、表面的には遺産に45%の税率がかかっているように見えますが、低税率部分の2,700万円を控除しているため、実際に45%の限界税率が適用されているのは2億円を超えた部分だけになります。
    一方、実際の相続税9,180万円を遺産総額3億円で割って算定した30.6%のことを実行税率といいます。
    贈与税についても同様に、1,000万円の贈与の場合、1,000万円から基礎控除110万円を控除した890万円を上記速算表に当てはめ、40%の税率を掛けて125万円控除した231万円が贈与税になります。速算表の40%を限界税率といい、贈与税231万円を贈与金額1,000万円で割った23.1%を贈与税の実行税率といいます。

    では、生前贈与の金額を計算する場合、限界税率と実行税率のいずれの税率を用いるのが正しいのでしょうか。

    税理士等が書いている書籍や雑誌、ホームページを見ると、相続税の限界税率と贈与税の実行税率が等しくなるまで贈与する方法がよく紹介されています。 この方法は、そもそも前提が、最適な生前贈与額を求めるためではなく、どこまで贈与しても損にならないかということを計算している点に留意が必要です。この考え方は相続税の限界税率よりも高い限界税率の贈与税を払ってしまうことになり、最適な生前贈与額を求める上では正しいとはいえません。

    上記例の遺産総額が3億円、相続人は子1人の場合について検討してみます(計算の単純化のため、3年内生前贈与加算は考慮しません)。

    ①【贈与税の実行税率と相続税の限界税率を比較するケース】
    相続税の限界税率は45%であるため、贈与税の実行税率が45%になる贈与額を計算すると、贈与する金額は7,005万円になります。
    贈与税:(7,005万円−110万円)×55%−640万円=3152.25万円
    実行税率:3,152.25万円÷7,005万円=45%

    その後相続が発生した場合、相続財産は2億2,995万円となり、相続税は6,058万円となります。
    よって、贈与税と相続税の合計は、9,210万円となります。
    この方法だと生前贈与をしなかった場合の相続税9,180万円よりも税金が高くなってしまいます。
    これは、7,005万円の贈与の内、3,110万円以上の部分に適用されている税率は相続税の限界税率の45%よりも高い50%、55%の税率が適用されているため、その部分については割高な税金を支払うことになるからです。贈与の実行税率だけに注目すると、一見税率は低く見えますが、実際は低い税率のゾーンと高い税率のゾーンが加重平均された結果低く見えているだけであり、節税という点ではそもそも相続税の限界税率よりも高い税率の贈与をする必要性はないと考えられます。

    ②【実際に生前贈与した後の贈与税と相続税の合計額をシミュレーションして年間贈与額を求める方法】
    先ずは、相続税の限界税率が45%であるので、同じ限界税率の45%の範囲の3,110万円を贈与する場合で計算すると、贈与税は1,085万円になります。
    また、その後相続が発生した場合、相続財産は2億6,890万円となり、相続税は7,781万円となります。
    よって、贈与税と相続税の合計は、8,866万円となります。

    実際にプログラムを組んでみて、シミュレーションしてみると年間1,600万円から約3,100万円までの間の金額で生前贈与をすれば、贈与税と相続税の合計金額は最小の約8,865円になります(シミュレーションは100万円から50万円単位で計算)。最適な生前贈与の額に一定の幅があるのは、相続税で同一の限界税率が適用される課税価格には一定の幅があるため、贈与税と相続税が同じ税率の範囲であれば、贈与税で払うか相続税で払うかの違いだけで、税金トータルで見ると結果は同じになるためです。
    また、生前贈与を3年間実行した場合は、年間1,650万円から2,100万円の間で贈与を実施すれば、贈与税と相続税の合計は最小の約8,237万円になります。
    さらに生前贈与を5年間実行した場合は、年間1,300万円から1,600万円の間で贈与を実施すれば贈与税と相続税は最小の約7,690万円になります。
    このように贈与できる期間が長ければ長いほど、節税効果は高くなります。また、贈与する期間が長くなると、贈与金額の累計も大きくなり、相続税の同一の限界税率の課税価格に対する割合が大きくなり、最適な生前贈与の金額の範囲も狭くなっていきます。

    生前贈与の金額は、このように前提条件により一定の幅があるため、単純に限界税率や実行税率だけで正確な数字を算定することません。そのため正確な金額を算定するにはプログラムを組んで実際にシミュレーションする方法が最も正確と考えられます。

    2015年5月1日
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