相続税申告に関するコラム
平成27年度税制改正大綱
1.結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の創設 <平成27年4月1日からの贈与に適用>
直系尊属(祖父母・父母)が20 歳以上50 歳未満の子・孫(以下、受贈者)の結婚・
子育て資金支払に充てるためにその金銭等を金融機関に拠出した場合には、受贈者1 人
につき
1,000 万円(結婚費用は300 万円まで)は贈与税がかからないことになりました。
結婚・子育て資金とは次のものをいいます。
- イ. 結婚に際して支出する婚礼(結婚披露を含む。)に要する費用、住居に要する費用及び引越に要する費用のうち一定のもの
- ロ. 妊娠に要する費用、出産に要する費用、子の医療費及び子の保育料のうち一定のもの
受贈者が50歳になった場合や死亡した場合に結婚・子育て資金管理契約は終了します。
そして非課税拠出額から結婚・子育て資金支出額を控除した残額があるときは、これらの事由に該当した日に当該残額の贈与があったものとして受贈者に贈与税が課税されます。
信託等があった日から結婚・子育て資金管理契約の終了の日までの間に贈与者が死亡した場合には、当該死亡の日における非課税拠出額から結婚・子育て資金支出額を控除した残額については当該贈与者の死亡に係る相続税の課税価格に加算されることになります。
コメント
将来の経済的不安が若年層に結婚・出産を躊躇させる大きな要因の一つとなっていることから、子や孫の結婚・出産・育児を後押しするため、祖父母や両親からのこれらに要する資金の一括贈与が非課税となりました。
高齢者から若年層に資金移転を促す最近の相続税・贈与税改正の流れを汲んだ改正であり、教育資金の一括贈与の非課税の利用が伸びていることから、手続き等も非常に似通った内容になっております。
2.直系尊属(祖父母・父母)から住宅取得資金の贈与税の見直し <平成27年1月1日より適用>
直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置が見直されます。
- イ. 住宅用家屋の取得等に係る対価の額又は費用の額に含まれる消費税等の税率が10%である場合
-
住宅用家屋の取得等に係る契約の締結機関 |
良質な住宅家屋 |
左記以外の住宅用家屋 |
平成28年10月~平成29年9月 |
3,000万円 |
2,500万円 |
平成29年10月~平成30年9月 |
1,500万円 |
1,000万円 |
平成30年10月~平成31年6月 |
1,200万円 |
700万円 |
- ロ. 上記イ以外の場合
-
住宅用家屋の取得等に係る契約の締結機関 |
良質な住宅家屋 |
左記以外の住宅用家屋 |
~平成27年12月 |
1,500万円 |
1,000万円 |
平成28年1月~平成29年9月 |
1,200万円 |
700万円 |
平成29年10月~平成30年9月 |
1,000万円 |
500万円 |
平成30年10月~平成31年6月 |
800万円 |
300万円 |
-
注)上記の「良質な住宅用家屋」とは、省エネルギー対策等級4(平成27年4月以降は断熱等性能等級4)又は耐震等級2以上若しくは免震建築物に該当する住宅用家屋をいいます。
コメント
住宅市場の活性化を促進するために、高齢者層の豊富な資金を若年層の住宅取得資金に充てるべく従来から継続されている住宅取得資金の贈与税の非課税制度が拡充されました。
また、消費税の増税を踏まえ、その引き上げ前の駆込み重要やその反動による住宅市場の冷え込みを抑えるための優遇措置といえます。
3.その他の改正
(1)固定資産税の軽減措置の廃止
荒廃して危険な空き家の撤去を促すため、政府は住宅が建つ土地の固定資産税を軽減する措置(住宅用地特例)を見直す検討に入りました。
近隣住民に迷惑がかかる
危険な空き家を減税の対象から除外する方向です。
2015年度の税制改正で実現をめざします。
コメント
空き家になっても建物を残しておけば住宅用地として固定資産税が軽減されるため、取り壊さず放置されている空き家が増加しています。全国の空家は820万戸で住宅総数に占める割合は13.5%となっています。
危険な空き家の撤去と土地の有効利用を促すために固定資産税の優遇措置が廃止されます。
(2)支払調書の改正(平成30年1月以降の契約者変更から適用)
- イ. 保険会社等は、生命保険契約等について死亡による契約者変更があった場合には、死亡による契約者変更情報及び解約返戻金相当額等を記載した調書を税務署に提出することになります。
- ロ. 生命保険金等の支払調書について、保険契約の契約者変更があった場合には、保険金等の支払時の契約者の払込保険料等を記載することになります。
コメント
被相続人が契約者となっていた保険契約は相続時の解約返戻金で評価することになりますが、相続財産として認識されていないケースがあることから、相続税の課税漏れを防ぐために生命保険会社に保険契約情報の提出を義務づけるようになります。