相続税申告に関するコラム
納税資金対策
生前に有効な節税対策をして相続税が安くなったとしても、その安くなった相続税を納める資金がなければ有効な相続税対策とはいえません。預貯金・生命保険・上場株式・投資信託などのすぐにお金に換えられる財産で税金を賄えるのであれば問題ありませんが、相続財産が土地等の不動産で占められている等、換金性の低い資産が多ければ、相続税を期限内に納めることができず、延納や物納により税金を納めることになります。
延納の利子税は高くつきますし、物納は相続税評価額よりも実勢価格が高い場合には不利となり、物納できる財産にも制約があるため、物納を当てにするのは賢明とは言えません。
よって、納税資金が心配な方は、相続が起こる前に納税資金対策を行うことが必要です。
1.資産を売却
売却できる資産があれば、売却代金をもって納税資金を確保することになります。土地については、納税のために急いで売らなければならないと相手に思われると、足元を見られ売却価格が低くなるため、時間的な余裕を持って取り組むことが望まれます。また、土地の売却には時間がかかるため、申告期限までに、売却・現金化出来ないときは、他の方法を選択する必要があります。従って、売却用の土地が決まっていたら、その土地だけでも早めに遺産分割をして、売却の話を進め納税資金を確保することが望まれます。
なお、土地を売却して譲渡益がある場合には所得税がかかります。なお、相続した財産を相続税の申告期限から3年以内に売却した場合には、相続税の一部を取得費に加算する取得費の特例があります。従って、税理士等に相談して売却と物納のどちらが有利か計算してしてもらう方が良いでしょう。
2.生命保険の活用
生命保険での対策とは、相続発生時の相続税額を予想した上でそれに見合う保険金額の保険に加入することで、相続税の納税資金を準備するというものです。
つまり、生命保険から支払われる死亡保険金で相続税を支払うということです。終身保険の有期払いで加入すれば、確実に死亡保険金を相続税の納税資金に充当することができます。そのため、支払保険料は相続税の分割前払いと考えることもできます。このことにより、所有土地等を譲渡または物納することなく相続税の納税を完結させることができます。
生命保険金の場合、500万円に法定相続人の数を乗じた金額は相続税がかからないという税法上のメリットもありますので、相続税対策としても有効です。
3.金融機関からの借入
金融機関から融資を受けて納税する方法です。金利は、金融機関により異なりますが、延納の金利より低い場合には有利となります。また、担保の設定費用(登録免許税が設定金額の0.4%)がかかります。
なお、不動産管理会社を設立して、法人が融資を受けて不動産を買い取る方法をとれば、利息等を法人の経費にすることができます。
4.会社オーナーのケース…金庫株の活用
会社が取得した自己株式のことを一般に「金庫株」と言います。そこで、相続人が相続した自社株を会社に買い取ってもらい、その売却代金で相続税を納税する方法があります。会社に買取り資金があれば、自社株を譲渡した株主に対する課税も軽減措置が設けられているため、有効な納税資金対策となります。
5.会社オーナーのケース…退職金の活用
会社経営をリタイアし、会社から退職金を受け取れば、会社の株価引き下げに有効であり、また、老後の生活資金として消費した残りは相続税の課税対象となる相続財産を構成し、相続人が相続税の納税資金として活用できる現金となります。
また、死亡の時まで会社に在職していたとすれば、死亡退職金を相続人に支給することができます。これは、相続税の課税財産とみなされ、相続税の課税対象となる(一定範囲の非課税枠があります)とともに、相続人が相続税の納税資金として活用できる現金となります。
このほか、会社が支給する一定範囲内の弔慰金は、相続人が現金を受け取れるにも関わらず、相続税の非課税財産となります。