相続税申告に関するコラム
養子縁組の利用
子供がいない夫婦の場合、財産をどのようにするか判断に悩むところです。
面倒をみてくれた甥に財産をわけてあげたい、家を継ぐ人がいないので承継者が欲しいということもあるはずです。
法定相続人でなくても遺言を作成することにより財産を相続させることはできるのですが、一親等の血族及び配偶者以外は税額が2割増になり相続税の負担が増えてしまいます。
そこで便利なのが、実の親子関係にない者が法的に親子関係になるための手続きをとる養子縁組という制度です。
養子縁組は養親と養子との合意で、市区町村役場に届け出をすることによって簡単に成立します。
養子縁組には普通養子縁組と特別養子縁組があります。
◆「普通養子縁組」・・・実親、養親の法定相続人
普通養子縁組では養子は養親の「嫡出子」となり、養親の戸籍に入り姓を名乗ります。「嫡出子」とは、原則として結婚期間中に生まれた子のことを指します。未成年の養子は、養親が親権者となりますが、実親との法律上の親子関係は縁組後も継続され、実親と養親のどちらに対しても相続権があります。
◆「特別養子縁組」・・・養親の法定相続人(実親との法律上の親子関係が完全に消滅)
特別養子縁組では、実親と養子の法律上の親子関係を完全に断ち、戸籍上も養子と判明しないような配慮がなされています。そのため、特別養子縁組で養子となった者は、養親の相続権だけで、実親のほうの相続権は消滅します。
特別養子縁組を成立させるには、普通養子縁組と違い、実親との法律上の親子関係も断ち切るということになるため、各市区町村へ届け出をするだけでは整わず、養親と養子の年齢や実親の同意、家庭裁判所の許可などさまざまな厳格な要件があります。
養子縁組による節税効果は大きく、法定相続人が一人増える訳ですから、相続税の基礎控除額が600万円増える、生命保険金・退職手当金の非課税枠の500万円増える等のメリットがあります。また、一人当たりの法定相続分が減少するため、相続税の総額を計算する際の税率が下がり、相続税が少なくなります。
届け出をするだけで節税になるため、相続税対策に大変効果的なのですが、歯止めをかけるべく実子がいる場合は養子のうち1人まで、いない場合は2人までを法定相続人として認める決まりがあります。また、被相続人の養子となっている被相続人の孫は、被相続人の子が相続開始前に死亡したときや相続権を失ったためその孫が代襲して相続人となっているときを除き、相続税額の2割加算の対象になります。
養子縁組をすることにより、個々の相続財産は減少することになりますので、節税を追い求めるばかりに争族になりかねないので、家族(相続人)全員の同意を得ておくことが最善策です。
なお、普通の養子縁組の場合は実父母との親族関係は存続するため、養親と実父母の両方の財産を相続することができます。
養子縁組による節税効果をまとめると次のとおりです。
- 相続人が増えるため、相続人ごとの取得財産が少なくなるため、適用税率が低くなる。
- 法定相続人数が増えるため、基礎控除額が増える。
- 法定相続人数が増えるため、生命保険金の非課税枠が増える。
- 法定相続人数が増えるため死亡退職金の非課税枠が増える。