相続税基礎知識に関するコラム
相続税の申告期限
1.相続税の申告期限
相続税の申告は被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内です。
例えば、2月1日に死亡した場合にはその年の12月1日が申告期限になります。
なお、この申告期限の日が土曜日、日曜日、祝日であれば、これらの日の翌日が期限となります。
申告期限までに申告をしなかった場合、本来の税金のほかにペナルティとして加算税がかかります。
2.申告義務者のそれぞれの申告期限
2-1.相続人・・・法定相続人として財産を相続した人
法定相続人として財産を相続した人の申告期限は、
被相続人の死亡を知った日(通常、被相続人の死亡の日)の翌日から10か月以内となります。
2-2.受遺者・・・遺言によって財産を遺贈された人
受遺者の相続税申告期限は、
自分が受遺者であることを知った日の翌日から10か月以内が申告期限となります。
- ① 特定受遺者 ➡ 遺言により、「特定の財産」を指定して遺贈を受ける人
- ② 包括受遺者 ➡ 遺言により、「財産の全部」「財産の半分」のように、割合を指定して遺贈を受ける人
2-3.特別縁故者・特別寄与者・・・ 相続人がいない場合に、特別縁故者として遺産を受け取った人や、特別寄与者として相続人から財産を分与してもらった人
特別縁故者・特別寄与者の相続税申告期限は、
遺産を受取った日から(遺産分割の確定日など)から10か月以内です。特別縁故者は家庭裁判所への申し立てを経て認定される必要があり、申し立てから認定までの期間を考慮して期限内に申告する必要があります。
- ① 特別縁故者 ➡ 相続人がいない場合に、家庭裁判所に「特別の縁故」が認められた人
・遺産分割が確定した日など、遺産を受け取ることが確定した日から10か月以内に申告
- ② 特別寄与者 ➡ 被相続人の親族(法定相続人ではない)が、被相続人の財産の維持・増加に貢献したとして、相続人から分与された財産を受け取る人
・遺産分与が確定した日(相続人との合意日など)から10か月以内に申告
3.申告期限の起算日である「被相続人の死亡を知った日」=「相続の開始を知った日」の扱い
相続税の申告期限(10か月)の起算点となる「相続の開始を知った日」は、通常は戸籍などで確認できる「被相続人の死亡した日付」が相続開始日となります。
また、相続人本人が自分に相続が発生したと知った日のことを指します。
3-1.「知った日」が被相続人の死亡日と異なる場合の申告期限の起算日
相続権が自分に回ってきたこと、または自分が受遺者であることを「知った日」が死亡日と異なる場合、その「知った日」の翌日が申告期限(10か月)の起算点となります。
相続税の申告など、相続に関連する手続きの期限は「相続開始を知った日」が、死亡した日付とは一致しないことがあります。
例えば、先に亡くなった方の子供が相続放棄し、その後に自分(兄弟姉妹)に相続権が回ってきた場合、親族が相続放棄したことを知った日が起算日となります。
また長年連絡を取っておらず、被相続人が亡くなっていたことを後から知った場合、死亡の事実を知った日が起算日です。
遺贈の場合、「知った日」が被相続人の死亡日と異なるケースは多々発生し得ます。
これは、受遺者(遺贈を受ける人)が被相続人の死亡の事実は知っていても、自分が遺贈によって財産を受け取ることを後から知る場合があるためです。
3-2.「相続開始を知った日」を証明するための資料例
- 戸籍謄本・除籍謄本・住民票除票:被相続人の死亡日を証明
- 死亡通知書・死亡診断書:届いた日付
- 相続放棄申述受理証明書:先順位の相続人が相続放棄したことを証明する書類で、受理通知書の日付が起算点となる場合がある
- 連絡記録:親族や役所などから相続開始について連絡を受けた際の記録や通知書
- 事情説明書:書類だけでは証明が難しい場合に、家庭裁判所に提出する
- 債権者からの通知書:債務の存在を知った日を証明する
など
4.申告期限までに遺産分割協議がまとまらなかった場合
申告期限までに遺産分割協議がまとまらなかった場合には、相続財産(全財産が分割されていない場合には全財産)を法定相続分に従って分割したものとして各人の課税価格を計算して申告します。
その後、遺産が分割されたならば、もう一度申告書を出しなおし(修正申告又は更正の請求)、税額を訂正することになります。
分割がまとまっていない段階での申告には、主に以下のようなデメリットがあり、納税額が増えてしまいます。
- 配偶者の税額軽減が受けられない(3年以内に分割をすれば更生の請求可能)
- 小規模宅地等の評価減の適用が受けられない(3年以内に分割をすれば更生の請求可能)
- 農地や自社株の納税猶予を受けられない
遺産分割が調わないと、遺産の中の預金が凍結されていて解約できないため、納税に充てることができなくなります。
また、遺産分割が調うまでは、相続財産は共有財産になるため物納もできません。
このように、遺産分割が調わないと上記のようなデメリットが生じるため、申告期限までに遺産分割を終わらせることが望まれます。